4月19-20日『順徳院姫宮消息装飾経』調査のこと

今年に入ってから日記をつける機会を逃していたので大事な出来事を記録しておくことにする。

2018年末に『順徳院姫宮消息装飾経』調査依頼のお便りをいただいた。消息装飾経といわれるものは数多く現存しているが、はるばるスコットランドから不便なこちらのお寺にも調査に来ていただき本当に感謝している。良い機会なのでお手伝いがてら自身も勉強させていただいた。当初20日の午前中で調査を終える予定を組まれていたが、消息経が8巻もあること、さらに別に2巻計10巻も有ることで急遽19日の夕方から調査を始めることにした。保養荘の宿泊もなんとか確保して夕方6時より始めて保養荘門限ギリギリの10時終え、20日は午前8時より撮影を開始し、お昼頃発の京都行きの列車になんとか間に合った。以下赤崎地区公民館だより4月号より。

楞厳寺にて、Dr Halle O’Neal、Syouun Nikaido、Kaori Oikawa

左から Dr Halle O’Neal、Syouun Nikaido、Kaori Oikawa

英国スコットランド エジンバラ大学で日本文化を研究されているハリー・オニール博士(Dr Halle O’Neal)と、アシスタントおよび通訳として英国ウェールズ アベリストウィス大学、及川香(おいかわかおり)教授のお二人が楞厳寺へおいでになりました。

ハリー・オニール博士は神戸大学、百橋明穂(とのはしあきお)名誉教授の下で文部科学省の奨学金を受け日本美術史を学び、2018年夏、ハーバード大学出版より日本の仏画に関する本[『Word Embodied The Jeweled Pagoda Mandalas in Japanese Buddhist Art』を出版され、そして、次の研究として中世日本における消息経に関する研究論文の調査のため来日され、楞厳寺では、順徳院姫宮消息装飾経の調査が行われました。

経文の背後にちらほらと現れる美しい「かな文字」に、思わず感嘆の声が上がります。無作為に散りばめられた文字の端に「うれし」(たぶん。。)という文字を見つけた時、経文に隠れたその後ろに一人の女性の姿がおぼろげながら見えてきた気がしました。『順徳院姫宮消息装飾経』については昭和53年発行「写真でつづる楞厳禅寺」、56年発行「楞厳禅寺随想」が発行される前、何日もかけての写真撮影が行われました。写真撮影により解読が進むかと思われましたが、それから半世紀近く経った今もまだ実現していません。ハリー・オニール博士のこの調査研究は「中世日本における消息経に関する論文」として先の本と同じハーバード大学出版から刊行される予定だと伺いました。これをきっかけに日本でも幅広い分野での研究が進むことを願っています。

また今回、かな文字とともに背景に描かれた草木の水墨画も見ることができました。芒、女郎花、熊笹、松などの水墨画に銀彩が施されています。特に芒の繊細な葉の動きは雁皮の繊維と同じくらい細く細密に描かれています。銀が変色していないのも不思議でした。銀彩がはっきり見えるように画像を加工していますので少々ギラギラしていますが、実際は背景にもっと沈んで見えています。金界の幅は約22mmで、227mmの高さに17文字書かれています。実際の大きさと穂先18mmの面相筆と比較してみるとその線の細さがよくわかります。

 

おまけ

私もご一緒に記念撮影。4人で手分けして全て写真撮影を行い、ハリー博士は背中と腰を痛め、及川先生も通訳と撮影準備でへとへと、和尚は撮影後の巻物の巻き戻しに必死。せめてお寺の奥さんは食事の準備でもすればよかったと思いつつわたしもへとへとで、3人でコンビニへ向かう。おまけにハリー博士にお弁当をご馳走になるというオチがついた。またいつかゆっくりとおいでください。今度は田舎料理をぜひ。