織上がる

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糸紡ぎの開始は2009年の6月だった。手紡ぎ糸の太さや撚りを決めるのも手探りで、いくつもサンプルを作ってみてた。それから、梅雨に紡ぎ汗をかきながら紡ぎ呼吸困難になりながら紡ぎ、皆既日食に紡ぎ、山苧の採取苧引の合間に紡ぎ、糸車の不調に弱りながら紡ぎ、染の準備に取りかかった時は11月になっていた。年が明けて2010年の一月にようやく小枠に糸を巻き取り整経の準備に掛かる。経に少し混ぜる、絹糸の扱いが上手く行かなくて泣く。整経の長さを間違えて本数が足りなくなり慌てて紡ぎ、それならいっそと、よせば良いのに経絣にする。悩みながら何度も染め直したこの糸が後々大変な苦労のもとになる。4月にようやく千切に巻いて機に上げることができた。ちょうど一年前になる。それからも綜絖、筬、織の問題が次々と起こるが、4月23日、やっと織り始めた。

途中何度も止めようかと思うほど糸切れがひどく、とにかく、一踏みするごとにどこかが切れる。それでも雨の日は少しは切れないで進んだようだ。順調ならば、緯絣でも一日50cmくらいは進むのに、ちょっと格子が入るだけなのに、(しかも経絣は無視して)一日かかって5cmも進まない日々が続く。うんざりしてもう止めてしまおうかと友人に電話を掛けて意見を聞くと、思いとどまるように勧められ、なんとか経糸を切らずに済んだ。糸は切らずに済んだけど、もう頭の中は切れそうだった。そして気分を変えようと結城行きを思い立つ。地機が何かを教えてくれる様な気がした。

年末でもあり、行事を控えていたので、帰ってからなかなか織りには向かえなかったのだけど、年が明けてようやく織はじめた。忘れないように思い出しながら地機を組み立て、少し織り、それから高機を仕上げようと毎日機に乗る。(乗ると言う言い方は結城で教わった)あれほど織りにくかったのになぜかすいすいと織れるようになっている、不思議。行き詰まったら にも書いたが、織の為の様々な初めての方法と、糸は切れるもの絡むものを前提とした結城紬の基礎を、つきっきりで教わったことが、そのまま高機にも役立ち機に向かう気持ちも整い、全ての悩みが解決した。

ようやく無事に、、、と言いたいところだが、、途中で緯糸が不足してしまう。試し織で予定していた色を変更したのが原因。用尺が、着尺に足りるかどうかの瀬戸際である。ただいま布は入浴中。(糊抜き)明日は晴天らしい。からりと乾いて、どんな風合いになるのか。。。まだまだほっこりもしていられない。