黒胡椒のベーグル

昼間熱くてだらだらとうたた寝したせいか眠れない。急におなかが減って来て友達の手土産のベーグルをかじる。黒こしょうが効いててよけいに目が冴える。昨日の話しを思い出す。

「博物館で見る昔の絣には力が有るのに、なぜか同じ紋様を織ったものでも今のものには力が無いんだよね。。なんでだろ。」「そういえばそうかな。。」色々見た布切れは何度も洗われて色あせてくたくたでは有るけれど、藍の色はますます冴えて、味わいが増している。糸は手紡ぎで、程よい厚みと肌になじむ風合いが有る。こぎれいでぱりっとした最近織られたものには無い味わいだ。

藍絣の着物も最近は、呉服屋の意向で薄物が良いのだと云う話しを聞いた。しっかりと厚手の生地じゃあ裏を付けられない。それでは値段的に合わないのだそうで、、、裏を付けた着物じゃあ、洗濯出来ないじゃないの?何度も水をくぐってこそ藍染の絣が良い色になっていくはずなのに。。。「自分の着る物はその辺の安い物、本当は自分が着る物を作りたいんだけど、、ね。」作り手が本当に作りたい本物が作れない世の中との狭間で、作り手が漏らした言葉の中に、置き去りにされた日本の伝統を想う。

「絵絣の柄、昔のものには、今では考えも付かない面白い紋様があったね」そうそう、そうなのだよ。今、終了作品の柄を考えているのだけどいまいちコレって浮かばない。無難に植物の柄なんかを書いては見るが、いまいち面白くない。絵絣の醍醐味ってなんだろうね。と、とりとめも無く想いを巡らす。ベーグルの黒胡椒の香りが、口の中でひりひり香る。