尾崎翠の故郷

9号線の帰りしな(帰る途中の意)、尾崎翠資料館のある岩井温泉に立ち寄った。資料館は花屋旅館の使われていない旧館の入り口横の一部屋に有った。どう見ても、映画化に合わせた急ごしらえの感じがした。旅館のご主人に「尾崎翠さんと花屋旅館さんはどういうご関係ですか?」と伺うと、「町に頼まれて」という事だった。それより、この旅館の建築に興味が有って、中をくまなく見たかったのだが、つい言いそびれた。大正昭和のモダンな臭いがする。聞くとこの辺りは昭和初期に大火が有り、殆どの家が焼失したらしい。で、幸か不幸か、、(そりゃもちろん不幸なのだが)どのお家もそんな感じで作りもしっかりしている。温泉街と云う事もあり、もしかしたらこの辺りはほとんどが旅館か商家だったのかもしれない。古びた日本の温泉街とはちょっと違う家々をせっせとカメラに収めた。

<資料館と元岩井小学校校舎(明治25年建築)>
商店街の裏手の道に入るとこの小学校が有った。大火にも燃えなかったようで、和洋折衷のいい味を出している。翠の生まれる4年前に建設された小学校で、父は此処の主席教員だったそうだ。幼い翠はこの建物をどんな風に見ていたのだろう。立派な看板とは裏腹に、保存も手入れもされていないらしく内部は荒れていた。一部セットのような新しいベニヤの仕切りが見えたのは、きっと映画撮影時の残骸だろうと思われる。裏手に回ると一部屋根が朽ちて落ちそうになっている。早く手を入れないと厄介なのに。始めっからココを資料館にするべきでしょと思うのだが。。。