お彼岸と茗荷

お彼岸もお中日になり、少しだけ慌ただしさから解放された。とはいえお彼岸のお参りが済んだ和尚さんはどっかに出かけてしまい、気が抜けた私はひっくり返った台所をようやく片付けて、昨日塩漬けにしておいた茗荷を酢漬けにすることにした。10月の4日の開山忌の料理に出すお約束の一品なので、きれいな形できれいな色がでる様に、しゃきしゃきとおいしく頂ける様にと気を使う。

お寺に来てから、色々な珍しいコトやモノがおもしろくて、母のする事を目で盗んでは直ぐに自分で作ったりやってみたりしていた。今はやりの「いなかぐらし」のお楽しみが一年中繰り広げられるような日々と言った感じかな。結構めんどくさい事が多いのだけど、それが面白かったのは、染織とかモノを作る事とかと、それは同じ位置に有ったからだとおもう。うまく出来ない事も多かったが、結構うまくいく事も有った。母にしてみれば、「こーじゃげに」(生意気にとかいう意味)と云う気持ちも有ったようで、色々摩擦も耐えなかった日々も有った。けれど、「自分でやってみたいのよ!」と言った気持ちが強く譲らなかった。だって嫁に来たのが30代後半、うかうかしてると覚える頃にばあさんになってしまう。

こんなに上等の茗荷を育ててられる(ほぼ勝手に生えている場所だが)のはやはり年の功だ。いい時期に草を刈りかぶせて放置のタイミングは小さい頃から農家で暮して体に染み付いたものなのだろう。玄関先にさりげなく置かれた茗荷を見て「ものすごい立派だねぇ、お母さん、漬けといてくださいな」と言うと「あんたが漬けた方がぱりっとして色もきれいだから、もって上がれ」と言う。

塩漬けにした茗荷はちょいと塩加減が多すぎた。薄い塩水に漬けて塩が抜けるのを待つあいだ、雨の上がった薄曇りの庭を一周する。涼しい風が流れ、萩が咲きいよいよ秋らしくなっていた。

暑さ寒さも彼岸までか。。。

お決まりの言葉がいつもと違った響きで心に届く。

さて、その後甘酢に漬けた茗荷はこんな風に暗い紫からイチゴみたいな真っ赤に変わった。丁度、クエン酸を入れた時の紫蘇ジュースと同じ。それと、新ショウガを甘酢に漬けた時もほんのり桜色に変わる。黒豆の煮汁に酢を加えると赤紫になる、、まさに、「染織とかモノを作る事とかと、それは同じ位置」なのです。

さて、コメントをくれた酒田(山形)の友人は茗荷をあまり利用しないようなので、酢漬け以外の芽茗荷、花茗荷のおすすめの食べ方をもう一つ。それは「ジャガイモと茗荷のお味噌汁」。小さく刻んでネギの代わりの薬味にも良いけど、大きめに刻んでくらくらっと煮るとエグ味がコクに変わります。コレがジャガイモと誠に相性が良い。お揚げを入れるとさらに美味。漬け物は柴漬けでおなじみだが、茗荷のぬか漬けもなかなか良いです。生で「さいみそ」を付けて食べるのも良い。酒田には「醤油の実」と云うのが有ったなぁ、花茗荷の花は、繊細ですぐにしんなりしますが、花も全て同じ様に食べられますから、お皿に盛ってもなかなか美しく、、、秋の夜長日本酒と相性が良さそうです。そういえば、25日は十五夜ですね。お酒の飲めない私は、月餅と珈琲かな。。。

始めの写真は塩漬けから取り出し水で洗った茗荷、みるみる青紫色が濃くなって驚く。取った時期が早くて長持ちさせたい時は塩漬けにして一晩置き、しっかり塩を抜いたあとさっとお湯をかけたものを甘酢に漬ける。中程まで浸かるのに少し時間がかかるが、すこしばかり長持ちするような気がする。

早く漬かってほしい時は採りたてを熱湯に入れさっと湯がき、湯を切ってあらかじめ合わせた甘酢に放り込む。数時間するときれいな色になり、2日ぐらいで食べごろになるが、早くにシャキシャキ感が無くなる

※酢はひたひたが良いです。今回酢切れで茗荷が浮いてます。こんな時は、瓶を時々逆さまにします。まだまだ暑いので冷蔵庫で保存します。